交通事故と労災の関係:「特別支給金」は調整されないって本当?

こんにちは、社会保険労務士の中間です。

業務中や通勤途中に交通事故に遭ってしまった場合、「労災保険」と「自動車賠償責任保険(自賠責)」のどちらを使うべきか、悩まれることがあるかと思います。

このテーマは実務上非常に重要で、判断次第で労働者にとって受け取れる金額やタイミングが変わってくるため、慎重に検討する必要があります。

今回はこの中でも「労災保険の特別支給金」に焦点を当て、「これは調整されない」というポイントについて解説していきます。

自賠責や任意保険と労災の関係

労災保険を使って給付を受けた場合、その後、自賠責や任意保険からも補償を受けることになりますが、基本的に二重取りにならないよう「調整」が行われます。

たとえば、労災保険の「休業補償給付(給付基礎日額の80%)」を受けた後、自賠責保険の休業損害(原則1日あたり最大6,100円)を請求する場合、その重複分は差し引かれます。逆もまた然りです。

つまり、休業補償や療養補償などの「基本給付」部分は、交通事故の保険と調整されるのです。

ただし「特別支給金」は別!

しかし、ここで注目したいのが、労災保険の「特別支給金」。

この「特別支給金」は、交通事故の補償(自賠責・任意保険)との調整の対象にはなりません

たとえば、労災保険で給付基礎日額の80%が休業補償給付として支給されたうえで、その20%分が特別支給金として支給されても、自賠責保険での休業損害との調整の対象とはならないのです。

つまり、労災保険を使ったことで、特別支給金の分だけ追加でもらえることになります。

労災保険は支給までに時間を要することが多い

労災保険は、交通事故が「業務災害」や「通勤災害」に該当するかを慎重に判断しますし、提出書類も多く、関係者も多岐にわたります。そのため、支給決定までに時間がかかる傾向があります。

一方、自賠責保険での休業損害の申請は、証明書類が整っていれば比較的スピーディーに支払われます。

そのため、まずは休業損害(自賠責・任意保険)から申請して生活資金を確保し、並行して労災申請を進めていくのが現実的です。

その上で、労災保険から「特別支給金」を受け取ることで、結果的に上乗せの補償が得られる、という流れになります。

まとめ

交通事故と労災が絡むケースでは、制度の複雑さから混乱することもありますが、「特別支給金は調整されず、別にもらえる」という知識を持っているだけで、選択肢や見通しが大きく変わります。

制度をうまく活用して、少しでも早く、そして多くの補償を得られるようにしたいところです。

お困りの際は、なかまにぜひご相談ください。