1ヶ月単位の変形労働時間制とは?

こんにちは、社会保険労務士のなかまです。
働き方改革が進む中、企業の労務管理において「変形労働時間制」の導入を検討されるケースが増えています。
特に「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、業務の繁閑に応じて柔軟な労働時間の設定が可能となるため、多くの企業で採用されています。
本記事では、この制度の概要や導入のポイントについて、わかりやすく解説いたします。

変形労働時間制とは?

通常、労働基準法では労働時間の上限が「1日8時間、週40時間」と定められています。
しかし、業務の繁閑に応じて労働時間を柔軟に調整したい場合、変形労働時間制を導入することで、一定の期間内で労働時間を平均し、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることが可能となります。
これにより、業務の効率化や残業代の抑制が期待できます。

1ヶ月単位の変形労働時間制の概要

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の一定期間を平均して、1週間あたりの労働時間が法定労働時間(通常は週40時間、特例措置対象事業場では週44時間)を超えない範囲で、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

対象期間と労働時間の上限

対象期間は最長で1ヶ月とされており、その期間内で平均して週40時間(特例措置対象事業場では44時間)以内に労働時間を設定する必要があります。
例えば、暦日数が31日の月であれば、週40時間の場合の法定労働時間の上限は177.1時間となります。

労使協定または就業規則による定め

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入するには、労使協定または就業規則に以下の事項を定める必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 対象期間およびその起算日
  • 各日および各週の労働時間
  • 労働日および労働日ごとの労働時間の特定

これらの定めを行った労使協定や就業規則は、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

導入のメリットと注意点

メリット

  • 業務の繁閑に応じた柔軟な労働時間の設定
    繁忙期には労働時間を延長し、閑散期には短縮することで、業務効率の向上が期待できます。
  • 残業代の抑制
    法定労働時間の範囲内で労働時間を調整することで、時間外労働の発生を抑えることが可能です。

注意点

  • 労働時間の特定
    労働日および労働日ごとの労働時間を具体的に特定しなければ、制度の適用が無効となる可能性があります。
  • 残業時間の計算
    1日または1週間の所定労働時間を超えた場合や、対象期間の法定労働時間の総枠を超えた場合には、時間外労働として割増賃金の支払いが必要です。

導入手続きの流れ

  1. 労使協定または就業規則の作成
    上記の必要事項を盛り込んだ労使協定または就業規則を作成します。
  2. 労働基準監督署への届け出
    作成した労使協定や就業規則を所轄の労働基準監督署に届け出ます。
  3. 労働者への周知
    制度の内容を労働者に周知し、理解を得ることが重要です。

労働時間の総枠と計算方法

1ヶ月単位の変形労働時間制では、月ごとの労働時間の総枠を超えないようにシフトを組む必要があります。
労働時間の総枠は、以下の計算式で求められます。

労働時間の総枠 = 週法定労働時間 × 月の暦日数 ÷ 7

例えば、週40時間の法定労働時間で、31日の月の労働時間の総枠は次の通りです。

40時間 × 31日 ÷ 7日 ≒ 177.14時間

この総枠を超えないように、各日の労働時間を設定する必要があります。

時間外労働の取り扱い

1ヶ月単位の変形労働時間制では、以下のような場合に時間外労働となります。

  • 1日または1週間の所定労働時間を超えた場合:その日や週の所定労働時間を超えて労働した時間は、時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。
  • 1ヶ月の労働時間の総枠を超えた場合:月の労働時間の総枠を超えた時間は、時間外労働となります。

これらの時間外労働に対しては、適切な割増賃金を支払う必要があります。
しかし、法律通り運用するのは難しいので、実際に運用する場合はご相談ください。

運用時の注意点

シフトの事前確定と周知

シフトは、変形期間の開始前に確定し、労働者に周知する必要があります。
そのシフトを変更する場合は、例外的、限定的な変更事由を具体的に就業規則等に記載し、原則その場合に限って勤務変更を行う必要があります。

勤怠管理の徹底

変形労働時間制では、労働時間の管理が複雑になるため、勤怠管理システムの導入や、管理者の教育が重要です。

就業規則の整備

就業規則には、すべてのシフトパターンや労働時間の設定方法を明確に記載する必要があります。
記載が不十分な場合、制度が無効と判断される可能性があります。

まとめ

1ヶ月単位の変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて柔軟な労働時間の設定が可能となる制度です。
しかし、適正な運用のためには、就業規則や労使協定の整備、シフトの事前確定と周知、勤怠管理の徹底などが求められます。
制度の導入や運用にあたっては、社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

以上で、「1ヶ月単位の変形労働時間制」についての解説を終わります。
制度の導入や運用に関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。