週休3日制などを可能にする「変形労働時間制」の実践事例
こんにちは、社会保険労務士の「なかま」です。
今回は、「変形労働時間制」を実際に活用している企業や団体の事例をご紹介します。
少子高齢化や働き方の多様化が進む中、企業は単なる「時短」だけでなく、「休み方改革」にも向き合わなければならない時代です。そうした中で、「変形労働時間制」は、週休3日制の実現や、繁閑に応じた勤務調整に欠かせない制度として注目されています。
目次
【事例①】ヤマト運輸|セールスドライバーに週休3日制を試験導入
物流大手のヤマト運輸では、2023年からセールスドライバー職を対象に週休3日制を試験的に導入しました。ドライバーの人手不足や長時間労働が課題となる中、より柔軟で健康的な働き方を目指す取り組みです。
この制度の基盤となっているのが、「変形労働時間制」です。週休3日とはいえ、1日の勤務時間を10時間に延ばすことで、法定の週40時間の枠内に収めています。
ポイント
- 繁忙期(年末年始など)には週5勤務も可能とする柔軟設計
- 閑散期には週3日勤務でワークライフバランスを確保
- 年間を通して労働時間を調整し、生産性と従業員満足の両立を図る
【事例②】ユニクロ(ファーストリテイリング)|週休3日制の地域正社員制度
アパレル業界で先進的な働き方改革を進めるユニクロでは、転勤なし・週休3日勤務が可能な「地域限定正社員制度」を導入しています。
この制度では、週4日勤務で1日10時間労働を基本とし、トータルでは週40時間となるように設計されています。
ポイント
- 小売業の繁閑に合わせ、変形労働時間制で年間スケジュールを柔軟に調整
- 育児や介護との両立、ライフスタイルの多様化に対応
- 社員のキャリア形成と柔軟な勤務体系を両立
【事例③】ホテル業|繁忙期に合わせたシフト運用で休暇を確保
ある地方都市の中堅ホテルでは、観光シーズン(GW・夏休み・年末年始)に合わせて、従業員の勤務を集中させ、閑散期には休暇を多めにとる運用を行っています。
変形労働時間制を使うことで、繁忙期の人手確保と、閑散期の長期休暇の両立が可能になりました。
ポイント
- 年間スケジュールに応じたメリハリ勤務
- 繁忙期:1日10時間、週6勤務 → 閑散期:週3〜4勤務や有休消化
- 従業員の満足度と宿泊サービスの質を両立
【事例④】製造業(電子部品)|年度末集中の受注に対応
ある電子部品メーカーでは、毎年2~3月に受注が集中します。これに対応するため、年度末に長時間勤務を集中的に設定し、それ以外の月は週4勤務や短時間勤務を導入しています。
ポイント
- 事前に繁忙期を見越して年間シフトを作成
- 工場管理システムと連携して労働時間を見える化
- 「働かせ過ぎ」と「人手不足」を同時に防止
【事例⑤】公共施設(市営ジム)|季節利用に応じた職員配置
ある地方自治体のスポーツ施設では、夏休みや冬休み期間中に利用者が集中するため、その時期にロングシフトを導入。
閑散期は短時間勤務などを積極的に行い、1年を通じて職員の負担を平準化しています。
ポイント
- 施設の稼働状況をもとに勤務計画を立案
- 変形労働時間制を使って繁閑対応を効率化
- 市の人事部門と連携して法令遵守を徹底
まとめ
「変形労働時間制」は、単なる節約策ではなく、人が安心して働ける仕組みづくりのツールです。
週休3日制をはじめとした柔軟な働き方の実現には、この制度をうまく活用し、現場の実情に合わせて設計・運用する力が求められます。
今後も企業の規模や業種を問わず、働き方の再設計はますます重要になっていくでしょう。
ご自身の職場での導入を検討する際には、制度の趣旨と実際の運用例を踏まえた丁寧な設計が必要ですので、お気軽にご相談ください。