第4部:36協定を活かす働き方改革と今後の展望
こんにちは、社会保険労務士のなかまです。
これまで3回にわたって、「36(サブロク)協定」について基本から実務対応、リスク管理まで詳しくご紹介してきました。
最終回となる第4部では、この36協定をいかに「働き方改革」の一環として活用していくか、また今後の展望や企業に求められる姿勢についてお話ししたいと思います。
目次
働き方改革と36協定の関係
働き方改革の要となるのが「労働時間の適正化」です。
36協定は、単に残業の「許可証」ではなく、時間外労働を必要最小限に抑え、計画的・公正に運用するための「コントロール装置」でもあります。
この意識の転換が、企業の持続可能性を高め、従業員の満足度や生産性の向上にもつながります。
働き方改革に取り組む企業の好事例
事例①:IT企業A社の残業削減プロジェクト
・特別条項の利用を最小限にとどめる方針を明文化
・プロジェクト単位での工数予測と残業制限を連動
・週に1回「ノー残業デー」の導入
→ 結果:1年で残業時間を30%削減し、離職率も減少
事例②:製造業B社のシフト制度見直し
・繁忙期に備えた柔軟なシフト制を導入
・部門ごとに36協定を見直し、実態に即した範囲で設定
・勤怠システムと連動して、月の残業限度に近づくと自動アラート
→ 結果:特別条項の発動回数を大幅に削減、行政指導も回避
今後の法改正・動向に備える
2025年以降も、働き方改革はさらに深化していくと見込まれており、以下のような動きが注目されています。
- 週休3日制導入の検討
- 副業・兼業の推進
- AIによる業務分配・残業抑制の導入
これらの動きに対応するためにも、36協定の内容は固定的に捉えず、定期的な見直しと柔軟な運用が求められます。
協定を「生かす」運用を
36協定は「形だけ整える」ものではなく、企業文化や業務運用の見直しと密接に結びつくべきです。
協定内容が実態と合っていないと、結局はトラブルや罰則のリスクにさらされてしまいます。
- 形式的でなく実効性のある協定を
- 労使間での透明なコミュニケーションを
- 継続的な教育と改善活動を
36協定を未来志向の経営へ
これからの労務管理は、「コンプライアンス遵守」だけでなく、「従業員の定着・活躍」や「企業ブランドの向上」にも直結します。
36協定の見直し・運用改善は、その第一歩となるのです。
4回にわたってお届けした「36協定」シリーズ、いかがでしたでしょうか。
ご不明点やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。
ご覧いただき、誠にありがとうございました。