第3部:36協定違反のリスクと企業が直面するトラブル事例
こんにちは、社会保険労務士のなかまです。
これまでの連載で、「36(サブロク)協定」の基本から作成手順までを詳しく解説してまいりました。
第3部となる今回は、36協定に違反した場合に企業が直面するリスクと、実際に起きたトラブル事例を紹介しながら、予防の重要性について掘り下げてまいります。
目次
36協定違反の主なリスク
行政指導・是正勧告
36協定に違反した場合、労働基準監督署による「是正勧告」の対象となります。
これは違法な長時間労働の実態に対して、改善を求める行政指導です。
是正勧告を受けた場合は、速やかに対応しなければ企業名の公表などのリスクもあります。
罰則・刑事責任
以下のケースでは、罰則が科される可能性があります。
- 36協定の未締結・未届出での残業
- 特別条項のルールを無視した労働
- 上限時間(年720時間、月100時間未満等)を超える残業
これらに該当する場合、労働基準法違反として「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
労災認定・民事訴訟のリスク
過重労働が原因で従業員が精神疾患を発症、あるいは過労死などに至った場合、企業は労災の対象となり、さらに損害賠償請求の対象となることがあります。
企業が直面した実際のトラブル事例
事例①:協定未締結による是正勧告
ある中小企業では、年末年始の繁忙期に社員に月80時間を超える残業を行わせていたが、36協定を届け出ていなかったことが判明。
労働基準監督署から是正勧告が出され、改善計画の提出と、労働者への説明責任が求められた。
事例②:特別条項の乱用による労災
製造業の企業では、特別条項付き36協定を理由に月100時間近い時間外労働を連月実施。
ある社員がうつ病を発症し、労災認定された上、遺族より企業に対して損害賠償請求がなされた。
事例③:労働者代表の選出手続きミス
労働者過半数代表の選出方法に瑕疵があり、締結された36協定が無効とされたケースもあります。
この結果、形式上は協定が存在していても、法的には効力が認められず、違法労働として扱われた。
トラブルを防ぐためのポイント
- 定期的な協定の見直し:業務実態と合わなくなった協定は早めに見直し、法令遵守を確保すること。
- 勤怠管理システムの導入:残業時間の自動集計と上限チェック機能を活用し、超過リスクを回避。
- 社内教育の徹底:36協定の内容と労働時間の規制について、管理職・一般社員に定期的な研修を実施。
- 第三者によるチェック:社会保険労務士など専門家のチェックを受けることで、見落としのない体制を構築。
次回の最終回・第4部では、「36協定を活かした働き方改革の実践と今後の展望」について、前向きな視点からご紹介いたします。
「三六協定」もなかまにおまかせ下さい。