テレワークでも使える?「事業場外みなし労働時間制」の正しい理解と運用ポイント

コロナ禍をきっかけに広がったテレワークは、多くの企業で定着しつつあります。しかし、在宅勤務では「労働時間をどう把握するか」が課題になることも少なくありません。

こうした中、耳にすることが増えたのが「事業場外みなし労働時間制」。
今回は、この制度がテレワークに適用できる条件導入時の注意点を、社労士目線でわかりやすく整理します。

そもそも「事業場外みなし労働時間制」とは?

「事業場外みなし労働時間制」とは、労働者が会社の事業場の外で業務に従事し、使用者が労働時間を正確に把握できず、かつ具体的な指揮監督が及ばない場合に、労働時間の算定が困難であるとして、原則として「所定労働時間」を働いたものとみなす制度です(労働基準法第38条の2)。

例えば以下のようなケースで使われてきました

  • 直行直帰の営業職
  • 海外出張など会社の管理が及ばない勤務
  • 自宅やサテライトオフィスでのテレワーク(ただし要件を満たす場合)

テレワークで使える?2つの重要な要件

テレワークでも「事業場外みなし労働時間制」を使えることがあります。
ただし、次の2つの要件をどちらも満たす必要があります(厚生労働省Q&Aより要約)。

要件①:労働時間の算定が困難であること

  • 通信機器を常時接続していない
  • 業務進行をリアルタイムで把握できない
  • 労働者が通信機器への応答を自らの判断で制御できる(例:メール返信や電話折り返しを自由に判断)

要件②:使用者の具体的な指揮監督が及ばないこと

  • 業務の目的や期限の指示にとどまり、スケジュールや細かい手順の指示はない
  • チャットやWeb会議で常に指示がある場合は「指揮監督下」と判断されやすい

【実例で確認】テレワーク時の適用判断

通信状況指揮命令制度適用可否
Aさん:在宅勤務、チャット常時接続、逐一報告義務あり常時接続詳細な指示あり❌ 不適用の可能性高い
Bさん:自己裁量で応答、週に1回の進捗報告のみ接続自由指示は期限と目標のみ✅ 適用の可能性高い

制度導入時の実務チェックリスト

  1. 就業規則で制度導入を明記
  2. 対象者・業務内容を明確にする
  3. みなし時間は原則「所定労働時間」で設定する
     ※ただし、「通常必要な時間」とすることも可能
  4. 労使協定の締結は必須ではないが、運用上の合意形成に役立つ
  5. 通信手段・指揮監督の実態が要件を満たしているか、運用実態の確認と見直しを定期的に行う

まとめ:テレワークだから使える、ではなく「実態」がすべて

テレワークだからといって自動的に「事業場外みなし労働時間制」が使えるわけではありません。
ポイントは、通信・指示の実態がどれだけ自律的か
制度を正しく理解し、就業規則や業務フローと照らし合わせて慎重に運用することが、企業・労働者双方のトラブル回避につながります。